アスペルガー症候群の夫と離婚したい方へ
- 執筆者弁護士 山本哲也

アスペルガー症候群の夫との夫婦生活が成り立たないという悩みを抱えて、離婚を考える方が増えています。
夫がアスペルガー症候群であることだけを理由として離婚するのは、難しいことが多いですが、不可能なことではありません。
この記事では、アスペルガー症候群の夫と離婚したい方へ向けて、離婚するためのポイントを中心に、知っておいていただきたいことを解説します。
アスペルガー症候群とは

アスペルガー症候群(ASD)とは、発達障害のひとつであり、自閉スペクトラム症(ASD)の一部として捉えられている先天的な障害のことです。主な特徴として、以下のことが挙げられます。
コミュニケーションが苦手
相手の気持ちを理解することや、場の空気を読むことが苦手なため、円滑にコミュニケーションをとることができず、対人関係がうまくいかないことが多いです。
1人で過ごすことを好む
他人の感情への共感性が低く、自分の感情を表現するのも苦手なため、1人で過ごすことを好む人が多いです。
特定のことにこだわる
自分が興味を持ったことに対しては時間を忘れて集中する一方で、興味の対象は限定されており、家事・育児などに興味がなければ何もしないこともあります。
マイルールにこだわる
自分で決めたルールやルーティンにこだわり、変化を好まない傾向があります。社会的な暗黙のルールを理解することは難しく、予測していなかったことへ柔軟に対応することも難しいため、仕事や人間関係で支障をきたしやすいです。
知能の遅れはなく、むしろ知的能力は高い人が多い傾向にあります。そのため、社会的地位が高い人の中にも、アスペルガー症候群を抱えている人は少なくありません。
しかし、仕事上の人間関係などで大きなストレスを抱えて、家庭内で配偶者に当たることも多いと考えられます。そのために夫婦関係がうまくいかなくなり、パートナーが離婚を考えるようになるのでしょう。
【参考】30代のための離婚相談
離婚を決める前にした方がいいこと

次章で詳しくご説明しますが、夫がアスペルガー症候群であることだけを理由として離婚するのは難しいのが実情です。
そのため、離婚を決める前に、まずは以下のことを試してみることをおすすめします。
アスペルガー症候群を個性と捉えて割り切る
アスペルガー症候群は先天的な障害なので、夫婦生活に支障をきたしたとしても、当人に悪意があるわけではありません。そのため、アスペルガー症候群を個性と捉えて割り切り、うまく対応することで夫婦生活を継続するのもひとつの選択肢です。
例えば、夫の共感性が乏しいことや感情表現が苦手なこと、マイルールにこだわることなどは、仕方のないこととして割り切ってしまった方がよいでしょう。
その反面で、決まったルールは守ってくれる傾向にありますので、夫婦間のルールや家庭内でのルールについて夫と話し合い、明確に決めておけば、トラブルの防止に役立つ可能性があります。
カウンセリングを利用する
うまく対応するためには、アスペルガー症候群について詳しく知っておくことも大切です。そのため、パートナーも精神科医やカウンセラーなどに相談してみるとよいでしょう。夫の症状に応じた具体的な対処法について、専門的なアドバイスが受けられます。
メンタルの専門家に話を聞いてもらうだけで、気持ちが楽になることもあるでしょう。パートナー自身のストレスもケアしてもらえるので、心に余裕を持って夫婦生活に向き合うことにも役立つと考えられます。
アスペルガー症候群の夫と離婚するためのポイント

ここからは、アスペルガー症候群の夫と離婚することを決めた方へ向けて、知っておくべきポイントをご説明します。
アスペルガー症候群だけが理由では離婚できない
夫がアスペルガー症候群であることだけを理由として、一方的に離婚することはできません。なぜなら、一方的に離婚するためには、民法で定められた法定離婚事由がなければならないからです。
法定離婚事由のひとつとして、「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」というものがありますが、アスペルガー症候群は「強度の精神病」には該当しないことがほとんどです。
そのため、アスペルガー症候群の夫に対して一方的に離婚を切り出しても、押し通すことは難しいと言わざるを得ません。
協議離婚は可能
夫婦が話し合って合意すれば、どのような理由でも協議離婚を成立させることが可能です。
とはいえ、コミュニケーションが苦手な夫と、離婚について冷静に話し合うのは難しいことが多いでしょう。無理に話し合いを進めようとすると、夫が激情したりして、深刻なトラブルに発展するおそれもあります。
話し合いが難しい場合は、弁護士に依頼することが有効です。経験豊富な弁護士がアスペルガー症候群の夫と的確に交渉することにより、スムーズな離婚成立も期待できます。
【参考】【弁護士が解説!】協議離婚と調停離婚どちらを選ぶべき?
他に法定離婚事由があれば離婚できる
協議離婚が成立しない場合には、家庭裁判所での離婚調停や離婚訴訟を検討することになります。しかし、最終的に訴訟で離婚するためには、法定離婚事由が必要です。
アスペルガー症候群の夫との夫婦生活で以下のような支障をきたしている場合は、法定離婚事由に該当する可能性があります。
- 夫の言動がDVやモラハラに該当する(婚姻を継続しがたい重大な事由)
- 夫が家庭を顧みない、生活費を渡さないなど(悪意の遺棄)
- 夫の言動がもとで夫婦喧嘩が絶えず、夫婦関係の修復が見込めない(婚姻を継続しがたい重大な事由)
- 別居が長期間続いている(婚姻を継続しがたい重大な事由)
その他にも、夫が不倫(不貞行為)をしている場合には、それが法定離婚事由にあたります。
慰謝料の請求はケースバイケース
アスペルガー症候群の夫との離婚が成立する場合に、慰謝料を請求できるかどうかはケースバイケースです。
法定離婚事由がなく協議離婚をする場合は、性格や価値観の不一致による離婚ということになるでしょうが、この場合には、基本的に慰謝料請求は認められません。
しかし、夫がDVやモラハラ、悪意の遺棄、不貞行為などの離婚原因を作った場合には、具体的な事情により数十万円~300万円程度の慰謝料請求が認められる可能性があります。
なお、慰謝料請求が認められない場合でも、財産分与や養育費(あなたが子どもの親権者となった場合)は請求できますので、適切に請求しましょう。
まとめ

アスペルガー症候群の夫との離婚は簡単にできないことも多いですが、離婚したいと考えるほどの状況でお困りの方は、弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。
弁護士法人山本総合法律事務所では、数多くの離婚問題を解決に導いてきた実績がございます。ご相談いただければ、状況に応じて最善の対処法をアドバイスすることが可能です。
群馬県でアスペルガー症候群の夫との離婚をお考えの方は、お気軽に当事務所へご相談ください。