依頼から約3か月で調停手続を経ずに早期に離婚解決に至った事例
- 執筆者弁護士 山本哲也
ご依頼者様データ
ご依頼者様 | 50代女性(公務員) |
相手方職業 | 公務員 |
子ども | 成人済み |
離婚請求 | 求めた側 |
理由 | 性格の不一致 |
依頼に至った経緯

夫婦関係の悪化と別居の開始
依頼者の方は、長年連れ添った夫婦関係が悪化し、夫が自宅を出て別居が始まりました。
夫はすでに退職しており、収入がないため、弁護士を通じて婚姻費用(夫婦が別居中も生活を維持するために支払う費用)の請求を受けていました。
有責配偶者としての不利な立場
さらに、依頼者は「不貞行為があった有責配偶者」という立場であったため、原則として自分から離婚を請求することは難しく、不利な状況に置かれていました。
依頼に至った理由
しかし、婚姻費用を支払い続けるよりも、財産分与や慰謝料を早期に提示して話し合いを進めれば、円満に離婚できる可能性があると判断し、当事務所にご依頼いただきました。
弁護士が実施したこと

財産の整理から着手
夫婦の婚姻期間は約30年と非常に長く、その間に築かれた財産も少なくありませんでした。財産分与を適切に行うためには、まず「どのような財産があるのか」を正確に把握する必要があります。
そこで、依頼を受けた当初から双方の財産をできるだけ早く調査し、一覧表を作成する作業に取りかかりました。
こうした資料を整えることで、後々の話し合いが感情的な争いに流れず、客観的な数字をもとに冷静に協議を進めやすくなります。
誠実な謝罪と慰謝料の提示
今回の依頼者は「不貞行為があった有責配偶者」という立場でした。この点を無理に否定してしまうと、相手の感情を逆なでして話し合いが長期化するリスクがあります。
そのため、依頼者の方には誠実に謝罪の意を示していただきました。そのうえで、相手方の心情に配慮しつつ、慰謝料の支払いを具体的に提示しました。
謝罪と補償の意思を早い段階で明確にしたことで、相手方も冷静に協議へ臨みやすい状況が整えられました。
早期離婚に向けた丁寧な説明
さらに、依頼者の希望である「早期の離婚成立」に向けて、私たちは繰り返し丁寧に説明を行いました。
婚姻費用を支払い続けるよりも、財産分与と慰謝料を早めに支払うことでお互いに新しい生活へと進める、というメリットを分かりやすく伝えました。
実際に具体的な支払計画を示すことで、相手方にも「この方法なら納得できる」と理解してもらうことができ、早期解決に向けた道筋を描くことができました。
得られた結果
・婚姻費用の請求を回避することができた
・早期に離婚することができた
・有責配偶者という立場であったが、その分の解決金の上乗せということもせずに離婚することができた
・財産分与として支払う必要があった事案であったが、その支払金額を大幅に抑えることができた
手がけた感想

今回のケースでは、なるべく早い段階で依頼者の財産資料、そして相手方の財産資料をきちんと整理し、証拠をそろえたうえで財産分与(夫婦が婚姻中に築いた財産を分けること)の話し合いに入れたことが、早期解決につながったと思います。
また、依頼者は「不貞行為をした有責配偶者」という立場でしたが、その事実を無理に否定せず、早い段階で「認めて謝罪する」という姿勢を示したことも大きかったと感じています。相手の感情を逆なですることなく、建設的な話し合いを続けられたため、紛争がこじれず長引かずに済んだのです。
同じように、「有責配偶者だが離婚したい」と悩んでいる方もいらっしゃると思います。その場合には、まず「自分の過ちをどう伝えるか」「謝罪の意思を見せるべきかどうか」を冷静に考えることが、とても重要なポイントになります。謝罪の仕方ひとつで、相手が歩み寄れるかどうかが変わってくることも多いのです。
まずは真摯に相手に謝罪するべきかどうかを検討するのも重要な一つの選択肢であると思います。