離婚した夫が養育費を支払ってくれない場合の対処法とは?回収方法や時効について解説
- 執筆者弁護士 山本哲也

「離婚のときに約束した養育費を支払ってくれない」との悩みを持つ方は多くいらっしゃるでしょう。厚生労働省の「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査結果報告」によると、母子家庭の7割以上、父子家庭では9割以上が養育費を受け取れていないということです。
しかし、養育費の支払いを受けられていない場合でも諦める必要はありません。2020年4月施行の民事執行法改正により、養育費の回収も成功しやすい状況になっています。
今回は、養育費の未払いでお悩みの方に向けて、養育費を支払わせる方法や養育費の時効、養育費の回収を弁護士に依頼するメリットなどを解説します。ぜひ、最後までご覧ください。
養育費を払ってくれない相手に支払わせる方法

養育費を支払ってくれない相手に養育費を支払わせる方法としては、次の5つが挙げられます。
- 相手との話し合い
- 養育費請求調停・審判
- 履行勧告
- 履行命令
- 強制執行
離婚する際に強制執行認諾文言付の公正証書を作成している場合や調停離婚で養育費の取り決めをしている場合などは、養育費の未払いがあった時点で強制執行の申し立てが可能です。養育費の取り決めをせずに離婚した場合や口約束の場合には、相手との話し合いから始めることになります。
それぞれの方法について、具体的に解説します。
相手との話し合い

養育費の未払いがあった場合、まずは相手方に電話やメールなどで連絡をして話し合いによる解決を目指します。
相手方が支払いに応じようとしない、まともに取り合ってくれないといったときには、内容証明郵便の利用を検討してみてください。内容証明郵便とは、郵便局が郵便の内容や宛先、送付、受取の日時などを証明してくれるサービスのことです。内容証明郵便を送付すると、相手方に本気度を示すことができますし、調停の証拠としても利用できます。
相手方が話し合いに応じてくれた場合には、今後の未払いに備えて公正証書を作成することをおすすめします。
養育費請求調停・審判
話し合いによる解決が難しい場合には、家庭裁判所に養育費調停請求を申し立てます。調停とは、裁判所の調停委員が仲介して、話し合いによる解決を目指す手続きです。
調停で話し合いがまとまると、調停調書が作成されます。調停調書は判決と同様の効力を持つもので、調停調書に定められた内容に違反した場合には、履行勧告・履行命令や強制執行による養育費の回収が可能となります。
調停がまとまらないときは、自動的に審判に移行するのが一般的です。審判では、裁判所が養育費の支払義務や金額を判断します。相手方が審判書の内容に違反した際には、調停調書に違反した場合と同様に、強制執行などの手続が可能です。
履行勧告
履行勧告とは、家庭裁判所から相手方に対して、調停調書や審判書で決められた内容を履行するよう催促してもらう手続きです。履行勧告は、簡易で費用もかかりませんが、強制力はありませんし、勧告に従わない場合の罰則もありません。
履行命令
履行命令とは、家庭裁判所から相手方に対して、調停調書や審判書で決められた内容を履行するよう命令してもらう手続きです。相手方が履行命令に従わない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。ただし、履行命令も履行勧告と同様に、相手方に養育費を支払わせる強制力はありません。
強制執行
強制執行とは、裁判所に申し立てをして、相手方から強制的に財産を回収する手続きです。強制執行を利用すると、相手方の給与や預金口座を差し押さえて、強制的に養育費を回収できます。
強制執行を利用するには、申立人が相手方の就労先や預金口座のある銀行などを特定しなければなりません。民事執行法改正で第三者からの情報取得手続が導入されたことで、就労先や預金口座を特定しやすくなっており、以前よりも強制執行による養育費の回収可能性は高まっています。
養育費はいつまで請求できる?|養育費の時効
養育費の請求権には時効があります。離婚調書や公正証書などで養育費の取り決めをしていた場合、時効は支払期日から5年です。たとえば、2025年4月1日が支払日の養育費は、2030年3月31日の経過によって時効となります。以後、支払日ごとに1か月分の養育費について時効が成立します。
ただし、未払いの養育費について、調停や判決で支払義務が定められた場合、当該養育費の時効は10年です。調停や判決で養育費の支払義務が定められた場合でも、将来分の養育費については、通常どおり5年となります。
養育費の未払いは弁護士に相談を

養育費の未払いでお悩みの方は、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に相談する主なメリットとしては、次の3つが挙げられます。
- 回収を進めるための最適な方法を提案してもらえる
- 相手方が支払いに応じてくれる可能性が高まる
- 相手方との交渉や裁判所の手続きを任せられる
未払いの養育費を回収するには複数の方法があります。具体的な状況に合わせて、どの方法を選択するのが効果的かを判断するのは簡単ではありません。弁護士に相談すると、どのような順序で手続きを進めるべきか、回収見込みはどの程度かなど、具体的なアドバイスがもらえます。
当事者の話し合いでは対応してくれない相手も、弁護士が交渉すると支払いに応じてくれる可能性が高くなります。手続きを依頼した場合には、相手との交渉や調停・審判などの裁判所での手続きを任せられるので、自分自身の手間をかけずに手続きを進めることも可能です。
養育費の未払いについて弁護士への相談を検討されている方は、養育費の未払いについて豊富な解決実績を誇る山本総合法律事務所までお気軽にお問合せください。
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