離婚後の子供の相続問題|前妻の子と後妻の間で起こる遺産分割トラブルと対策

更新日:2025/12/18
前妻の子と後妻の間で起こる遺産分割トラブルと対策

日本の家庭において、離婚や再婚は決して珍しいものではありません。

離婚や再婚に伴い、「前妻(前夫)との子」と「現在の妻(夫)との子」が混在する家族構成も増えています。こうした複雑な家族関係のなかで、いざ親が亡くなったときに起こりやすいのが「遺産分割トラブル」です。

「今の妻や子どもに財産を残したい」「前妻との子にも公平に分けたい」と思っていても、何も準備をせずに亡くなれば、法律のルールに従って遺産が分けられます。そして、その結果、想定外の紛争に発展することが少なくありません。

そこで、今回は、離婚後の相続における基本ルール、よくあるトラブル、そしてトラブルを未然に防ぐための実践的な対策について、詳しく解説します。

誰が相続人?離婚・再婚後の複雑な相続関係を整理する

話し合いをしている男女

最初に、離婚や再婚があった場合の相続関係について整理します。

相続の基本ルール:法定相続人の範囲と順位

相続が発生したとき、誰が遺産を受け継ぐのかは民法で定められています。基本的な順序は以下のとおりです。

  • 第1順位:子(実子、養子を含む)
  • 第2順位:直系尊属(父母、祖父母など)
  • 第3順位:兄弟姉妹

そして、配偶者は常に相続人となります。つまり、子がいれば「配偶者+子」、子がいなければ「配偶者+父母」、父母もいなければ「配偶者+兄弟姉妹」が相続人となるのです。

離婚・再婚をしている場合でも、このルールは変わりません。問題となるのは「子の立場」によって、相続人になるかどうか、権利の範囲がどうなるかという点です。

「元配偶者の子」と「現在の配偶者の子」の権利は全く同じ

親が離婚していても、被相続人の「実の子」であれば相続の権利を持っています。

具体的には、①前妻との子、②後妻との子、③婚外子(認知された子)、④養子は、いずれも法律上は「子」であり、相続分は平等です。

例えば、父親が再婚して後妻との間に子がいたとしても、前妻の子と後妻の子の相続分は同じ割合になります。

この点を誤解して、「今の妻の子だけが相続できる」と思い込んでいる方もいらっしゃるようですが、法律上はそうではありません。親の財産はすべての子に等しく分けられることになります。

相続人ではない人:元妻・元夫と「再婚相手の連れ子」

一方で、次の人たちは相続人にはなりません。

元妻・元夫

離婚すれば法律上の配偶者ではなくなるため、相続権は消滅します。

再婚相手の連れ子

再婚相手の連れ子は、配偶者と養子縁組をしていない限り、血縁関係が発生しないため相続権はありません。

つまり、「被相続人が再婚相手の子と同居していたが、養子縁組していなかった」という場合、その子は被相続人の遺産を相続できないのです。

【参考】【弁護士が解説】養育費の相場・支払い期間・変更できるケースを徹底解説

離婚後の相続でよくあるトラブル

子どもと手を繋いでる男性

離婚・再婚家庭の相続では、利害関係が複雑に絡み合うため、一般の家庭よりもトラブルが起こりやすい傾向があります。代表的な例を見ていきましょう。

「新しい家族」と「元の家族」の対立

もっとも典型的なのは、後妻(または後夫)と前妻(前夫)との子どもとの間で対立が起こる場合です。

たとえば、父親が亡くなり、相続人が「後妻+前妻の子+後妻の子」であるケースが挙げられます。

後妻からすれば「一緒に生活してきたのは私と私の子なのだから、遺産は私たちのもの」と思いがちです。しかし法律上、前妻の子にも同等の相続権があります。

こうした認識のずれから、「前妻の子が多く取りすぎだ」「後妻に不当に有利だ」といった争いに発展することが少なくありません。

元配偶者が借金を残して死亡

もうひとつ多いのが、「元配偶者が借金を残して亡くなった場合」です。

元妻や元夫はすでに相続人ではないため責任を負いませんが、子どもは相続人になります。借金も相続の対象になるため、親が負債を残して亡くなれば、その子が相続することになります。

このとき、相続放棄や限定承認といった手続を適切に行わないと、子どもに借金返済の義務が生じてしまう可能性があります。親が離婚していても、子どもに相続の責任が及ぶ点には注意が必要です。

【参考】再婚

相続紛争を未然に防ぐには?

悩んでる男性

前妻(前夫)と後妻(後夫)とその子らの間の相続のトラブルを防ぐには、「誰に、どの財産を、どのように残すのか」を生前に明確にしておくことが不可欠です。

誰にどの財産を渡すか明確にする「遺言書」の作成

もっとも有効な方法は、遺言書を作成することです。

遺言があれば、法定相続分にかかわらず、被相続人の意思に従って財産を分けることができます。たとえば、「後妻とその子に多めに財産を残したい」「前妻の子にも公平に分けたい」といった希望を具体的に反映させることが可能です。

遺言がなければ、前妻の子と後妻の子が法定相続分に従って分けることになり、先にも述べたとおり、感情的な対立が深刻化しやすくなります。

遺留分対策にもなる「生前贈与」という選択肢

遺言書に加えて、生前贈与を活用するのもひとつの方法です。

生前に財産を渡しておけば、遺産分割の際の対象財産が減り、トラブルを抑える効果があります。また、相続税対策としてもメリットがあります。

ただし、生前贈与をしても、法定相続人には「遺留分」という最低限の取り分が保障されています。前妻の子が遺留分侵害額請求を行えば、贈与を取り戻される可能性もあるため、慎重な計画が必要です。

【参考】財産分与について

複雑な家族関係の相続こそ、法律の専門家である弁護士への相談が不可欠

弁護士一同

離婚・再婚後の相続は、権利関係が複雑で、感情的な対立も激しくなりやすい分野です。「遺産分割調停」に発展すれば、裁判所での手続が必要になり、時間も費用もかかります。

そのため、トラブルを避けたいと考えるなら、早めに弁護士へ相談することが重要です。弁護士は、誰が相続人になるのかを整理したうえで、トラブルを避けるための遺言や生前贈与を提案し、紛争になった場合の交渉や調停の代理をする
といった役割を担います。

特に、前妻の子と後妻の子が混在する家庭では、当事者だけで冷静に話し合うのは難しいのが実情です。専門家を間に入れることで、法律に基づいた公平な解決を図ることができます。

  • 前妻の子も後妻の子も、実子であれば相続権は平等
  • 元配偶者や養子縁組していない連れ子には相続権はない
  • トラブルを防ぐには、遺言書や生前贈与が有効
  • 借金を残した場合は、子に相続の責任が及ぶため放棄の検討が必要

以上のようなポイントを踏まえて、生前から準備を整えておくことが、遺族間の争いを防ぐ最善策です。

弁護士法人山本法律事務所は、遺産分割に知見が深く、離婚や再婚により相続関係が複雑になった場合でも、円滑に遺産分割ができるようにアドバイスすることが可能です。

離婚再婚により相続人間の関係が複雑になり、遺産分割にお困りの方は、ぜひお気軽に弁護士法人山本法律事務所にご相談ください。

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