モラハラ離婚で慰謝料請求はできる?相場や事例を弁護士が解説

更新日:2025/12/24
モラハラ離婚で慰謝料請求はできる?相場や事例を弁護士が解説

モラハラとは

モラハラとは

 「モラハラ」とは、モラル・ハラスメントの略称で、言葉や態度によって相手の人格や尊厳を傷つける精神的な嫌がらせを意味します。

例えば、配偶者に対して暴言を浴びせる、長時間にわたり無視する、行動を過度に監視・制限するといった行為はモラハラに当たる可能性があります。

こうした行為は直接的な身体的暴力を伴わないものの、被害者に大きな精神的苦痛を与える深刻なDV(ドメスティックバイオレンス)の一種です。

モラハラは、一回一回の行為はそれほど重大なものでなくとも、長期間にわたり執拗に繰り返されることで大きな被害を生むという特徴があります。

モラハラの厄介な点は、被害者が、自分がモラハラ被害に遭っていると自覚しづらい場合があることです。

モラハラ加害者から執拗に責められ続けるうちに「自分にも非があるのではないか」と感じてしまったり、身体的な暴力のように外傷が生じず被害が目立たないため「大げさかもしれない」と思ってしまったりするケースが少なくありません。

しかし、モラハラは精神に深刻な支障をきたすおそれのある重大な行為です。

 些細なことで不機嫌になり怒ったり無視したりする、自分をいつも正当化する、行動を支配・監視しようとする、「男らしくない」「女らしくない」など性別による先入観を押し付けてくる等に配偶者が当てはまる場合は、モラハラ被害に遭っている可能性が高いですから、早めの対策が必要です。

【参考】パートナーのモラハラに苦しんでいる方へ

モラハラ離婚で慰謝料請求はできる?

離婚届と慰謝料

 慰謝料は精神的苦痛を慰謝するための金銭であり、まさにモラハラは精神的苦痛を与える不法行為(民法709条)ですから、離婚時に慰謝料を請求できます。

しかし、モラハラによる慰謝料を請求し訴訟を提起しても、裁判所が認めてくれるとは限りません。モラハラは暴力と異なり目に見える傷が残らず、モラハラ行為自体も発言や無視等の態度であるため証拠が残りにくいからです。

後述のとおり、モラハラでの慰謝料請求を成功させるうえでは証拠を確保しモラハラを立証できる準備を整えることが大切です。

【参考】「誰のおかげで生活できてる(飯が食える)と思ってるんだ」はモラハラになる?

モラハラ離婚の慰謝料請求の事例

モラハラ証拠

モラハラによる慰謝料請求が認められた過去の事例をご紹介します。

東京地方裁判所令和元年9月10日判決

夫が妻に対し「頭がおかしい」「バカ」「きちがい」「狂ってる」等の暴言を繰り返し、妻が自分の言うことを聞かないと「勝手にしろ」「別居する」などの発言が繰り返さし行われていた事案です。

この事案では、これら夫の暴言が録音されており、録音が重要な証拠となりました。

裁判所は「これら一連の暴言はいわゆるモラルハラスメント行為に当たり、妻の人格権を侵害するもの」と判示し、夫に対し慰謝料200万円の支払いを命じています。

録音という客観的証拠によりモラハラの事実が立証されたことが決め手になりました。

東京地方裁判所平成17年3月8日判決

過換気症候群等の症状を持つ妻に対し、夫が「お前は頭がおかしい」「なんでそんなに医者ばかりかかるんだ」とった発言をしていた事案です。

妻の通院を妨害したり、生活費を少額しか渡さないとった行為も継続的に行われていました。

裁判所は、これらを継続的かつ一方的な行為であり、総体として不法行為を構成するものとして慰謝料請求を認容しました。

モラハラ離婚で慰謝料請求を成功させる秘訣

モラハラの証拠を残している様子

モラハラを理由に慰謝料請求を成功させるためには、事前の準備と証拠集めが極めて重要です。

なぜなら、裁判所は公平中立な立場で客観的な証拠に基づき判断するため、請求する側(被害者)がきちんと証拠を準備・提出できなければ、慰謝料請求は認めてもらえません。

上記で紹介した裁判例でも、録音データという客観的証拠が非常に重要な役割を果たしています。

そのため、成功の秘訣は、日常生活においてモラハラを立証するための証拠を継続的に集めておくことです。証拠となりうるものの典型例は下記が挙げられます。

録音、音声データ

ボイスレコーダーやスマホのアプリで録音します。

録音する際のポイントは、やり取りの一部のみではなく核心的部分(暴言等)の前後も含めて録音することです。

録音が一部のみだと、「単なる夫婦喧嘩にすぎない」「たまたま厳しい言い方になってしまった」「お互いに言い合っていたから一方的にモラハラをしたわけではない」などと反論されるおそれがあります。

また、継続的に暴言を受けていることを立証するためにも、なるべく多数回の録音をとりましょう。

LINEやメールなど(モラハラ加害者とのやり取り)

LINEやメール等のメッセージ上での暴言もモラハラの証拠となります。

LINE等のやり取りは、その記録自体が客観的証拠であるためモラハラを立証するための有力な証拠です。

メッセージを消されても証拠を保全できるよう、スクリーンショットや紙で印刷等をしておくと安心です。

病院の診断書やカルテ

モラハラを受けた結果、うつ病や不眠症といった症状が現れてしまった場合は、診療内科等の受診を推奨します。

医師に対してそのような症状が出た原因・経緯を詳細に説明し、医師に診断書を作成してもらえば、診断書がモラハラの証拠となります。

日記

被害者が作成する日記も証拠となりえます。

モラハラを受けた都度、リアルタイムで日記をつけておけば、日常的にモラハラが行われていることを証明できる可能性があります。

モラハラ行為の内容だけでなく、日時・場所も記載しましょう。

もっとも、日記は一方当事者である被害者が自身で作成するものですので、録音等の客観的証拠と比べると、どうしても証拠としての価値が下がってしまう点は注意しましょう。

【参考】モラハラ離婚を有利に進めるために! 証拠とその集め方

モラハラ離婚は弁護士に相談を

所員一同

モラハラを理由に慰謝料請求したい場合は、何がモラハラに該当するのかを理解し、証拠を準備する必要があります。

モラハラを受けて悩んでいたり、モラハラを理由に離婚や慰謝料請求を行いたいと考えていたりする場合は、モラハラに精通する専門の弁護士に相談することを推奨します。

専門知識に基づいた実践的な助言をもらえるだけでなく、弁護士が自分の味方となってくれることで心の支えにもなります。

当事務所ではこれまでモラハラに苦しむ数多くの方からご相談を受け、慰謝料請求や離婚手続を支援してきました。

また、法律的な支援に留まらず、相談者の立場に立った親身なサポートを行っております。

当事務所のたしかな経験とノウハウを持つ専門の弁護士がご相談をお受けしますので、まずはお気軽にお問合せください。

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