婚約破棄で慰謝料は請求できる?

更新日:2025/11/11
婚約破棄で慰謝料は請求できる?

結婚を誓い合っていたにもかかわらず不当に婚約を破棄された場合は、相手方に対して慰謝料を請求できる可能性があります。

しかし、婚約が法的に成立していない場合や、婚約破棄に正当な理由がある場合は、慰謝料請求ができないことに注意が必要です。

今回は、婚約破棄の慰謝料について、弁護士がわかりやすく解説します。

婚約破棄で慰謝料の請求が認められる条件

婚約破棄で慰謝料の請求が認められる条件

婚約破棄で慰謝料の請求が認められるためには、「婚約が成立していたこと」と「不当に婚約が破棄されたこと」という2つの条件を満たす必要があります。

それぞれの条件について、以下で具体的にご説明します。

婚約の成立が客観的に認められること

婚約とは、将来的に結婚する約束のことです。法的には、婚姻することを目的とした「契約」に該当します。

契約は原則として口約束でも成立しますので、2人の間で「結婚しよう」と合意しただけでも、理論上は婚約が成立します。

ただし、相手方が婚約の成立を否認した場合、裁判所などの第三者に対して口約束の事実を証明するのは難しいものです。そのため、実務上は婚約の成立が客観的に認められるどうかが重要となります。

具体的には、以下のような事情があると、婚約の成立が認められやすいです。

  • 婚約指輪を交換した
  • 親族や友人に婚約者として紹介した
  • 結納や両家の顔合わせを済ませた、またはその準備をしていた
  • 結婚式場の予約をするなど、結婚式の準備を進めていた
  • 結婚を前提として既に同居していた

なお、「いつか結婚したいね」と期待を述べていたに過ぎない場合や、結婚を前提としない同棲をしていた場合などでは、婚約の成立が認められないことにご注意ください。

婚約破棄に正当な理由がないこと

契約が成立しても、正当な理由があれば破棄できる場合もあります。

婚約破棄については、社会通念上、結婚して夫婦関係を継続していくことが困難であると認められる事情がある場合には、正当な理由があるといえます。

具体的には、以下のような事情が婚約破棄の正当な理由として挙げられるでしょう。

  • 不倫や浮気(不貞行為)
  • 暴力や虐待、重大な侮辱
  • 経済状況の悪化
  • 重度の精神疾患の発症

一方で、単に気が変わった、考え直したい、性格の不一致、親の反対などは、それだけでは基本的に正当な理由として認められません。

【参考】「その他婚姻を継続し難い重大な事由」とは?離婚が認められる12の具体例

婚約をしているという証拠

結婚指輪

慰謝料請求の際に相手方の言い逃れを許さないためには、婚約をしているという証拠を確保しておくことが大切です。裁判では証拠が必要不可欠となりますので、早めに以下のような証拠を集めておきましょう。

  • 婚約指輪の現物や領収証
  • 結納式や両家の顔合わせの際の写真や領収証
  • 結納金を授受したことが分かる預金口座の履歴など
  • 結婚式場を予約した際の書類や、作成済みの招待状
  • 新婚旅行を予約した際の書類
  • 新居の賃貸借契約書や、既に同居していた事実
  • 相手方とのLINEやメール、手紙、会話の録音データなどで、相手方の結婚意思が分かるもの
  • 第三者の証言
  • 相手方との交際状況を記録した日記やメモなど

人の証言や、自分で作成した日記やメモなども証拠の一つとなりますが、なるべく客観的に婚約の成立を証明できる証拠を確保した方が望ましいです。

婚約破棄の慰謝料の相場

婚約破棄

不当な婚約破棄によって精神的苦痛を受けた場合は、慰謝料請求が可能です。

婚約破棄の慰謝料の相場は、離婚による慰謝料の相場よりは少し低く、数十万円~200万円程度です。結婚への期待度や婚約破棄の悪質性など、さまざまな要素によって慰謝料額が左右されます。

一般的には、以下のような事情があると高額の慰謝料が認められやすくなります。

  • 交際期間や同居期間、婚約期間が長い
  • 結納式を済ませた、結婚式場の予約をしたなど、結婚に向けた準備が進んでいた
  • 破棄された側が妊娠や出産をしていた、あるいは破棄されたために中絶をした
  • 婚約を機に退職や転居をした
  • 破棄された側の年齢が高い(結婚適齢期を過ぎている)
  • 相手方が浮気をして一方的に婚約を破棄した

結婚式場や新居を準備していた場合の費用はどうなる?

お金と自宅

既に結婚式場や新居を準備していた場合、婚約破棄によって費用が無駄になることもあるでしょう。

これらの費用は、婚約破棄と相当因果関係がある限り、慰謝料(精神的損害に対する賠償金)とは別に、財産的損害に対する賠償金として、相手方に請求できます。

なお、婚約指輪や結納金を渡していた場合には、その返還を求めることも可能です。婚約指輪や結納金を渡す行為は、結婚することを条件とした贈与契約と考えられるため、その条件成就を不当に妨げられた場合には、不当利得として返還請求が認められるからです。

【参考】他に好きな人ができたけど離婚できる?子どもがいる場合の注意点と親権・慰謝料の行方

慰謝料を請求する際の流れ

婚約を不当に破棄された場合の慰謝料請求の手続きは、以下の流れで進めていきます。

相手方との話し合い

まずは、相手方との話し合いです。

相手方と落ち着いて話し合える状況の場合は、直接話し合ってみるのもよいでしょう。婚約を破棄した理由や、やり直せる可能性はないのかを尋ねてみることで、納得のいく形で解決を図れる可能性もあります。

感情的な対立が激しい場合など、落ち着いた話し合いが難しい場合には、内容証明郵便を送付し、相手方からの連絡を待って話し合うのが一般的です。

話し合いがまとまったら示談書を作成し、合意内容を証拠化しておくことも大切です。慰謝料を確実に支払ってもらうためには、公正証書で示談書を作成することが望ましいといえます。

裁判

話し合いがまとまらない場合や、相手方が話し合いに応じない場合は、裁判所の手続きを利用することになるでしょう。

損害賠償請求訴訟を提起し、婚約が成立していたことと、相手方が不当に破棄したことを証明できれば、判決で慰謝料の支払いが命じられます。

お金が欲しいというよりも、婚約を破棄した理由を知りたい場合や、やり直せる可能性を探りたい場合には、民事調停を申し立てるのも一つの方法です。簡易裁判所の調停委員会を介して柔軟に話し合うことで、納得のいく結果が得られることもあります。

差押え

以上のプロセスを通じて決まった慰謝料を、相手方がスムーズに支払ってくれればよいですが、任意に支払わない場合には、強制執行手続きにより相手方の給料や預金口座などの財産を差し押さえて、回収することもできます。

なお、強制執行を申し立てるためには、確定した判決書や調停調書、強制執行認諾文言付き公正証書など、「債務名義」と呼ばれる文書が必要です。

示談書を作成していても、私文書の場合や、公正証書でも「強制執行認諾文言」」が付されていない場合は、債務名義に該当しませんので、そのままでは差押えができないことにご注意ください。

【参考】【Q&A】離婚の慰謝料はどうやって決まるのか教えてほしい

まとめ

弁護士一同

婚約を不当に破棄された場合は、慰謝料請求が可能です。

しかし、法的に婚約が成立していたかどうかについて、慎重な判断が必要なケースも多いです。

さらに、婚約破棄に正当な理由がないことを確認した上で、婚約成立や不当破棄の事実を証明できる証拠を確保することも重要となります。

慰謝料請求の手続きをスムーズに進めるためには専門的な知識を要しますので、困ったときは弁護士によるサポートを受けた方がよいでしょう。

群馬の弁護士法人山本総合法律事務所では、離婚問題や男女問題に積極的に取り組んでいます。婚約を破棄されてお困りの方は、一人で抱え込まず、お気軽に当事務所へご相談ください。

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