他に好きな人ができたけど離婚できる?子どもがいる場合の注意点と親権・慰謝料の行方

更新日:2025/08/29
他に好きな人ができた

結婚して子どもがいる家庭でも、「ほかに好きな人ができた」という理由で離婚を考えるケースは少なくありません。しかし、離婚は自分の気持ちだけで決断できるものではなく、法律や子どもの将来についても慎重に考える必要があります。

本記事では、

  • 好きな人ができた場合に離婚できるのか
  • 子どもがいる場合の親権や養育費
  • 慰謝料が発生する可能性

などについて、離婚問題に詳しい弁護士が解説します。

「好きな人ができた」という理由で離婚はできる?

原則として、好きな人ができただけでは離婚できない

民法上、離婚は一方の意思だけで成立するわけではありません。

特に、パートナーが離婚に同意していない場合は、家庭裁判所での離婚訴訟が必要になりますが、その際には「法定離婚事由」が求められます。

法定離婚事由とは

離婚裁判では、以下に掲げる法定離婚事由のいずれかがなければ離婚は認められません。

法定離婚事由 内容
 不貞行為  配偶者以外と肉体関係を持つこと
 悪意の遺棄  配偶者を正当な理由なく見捨てること
 3年以上の生死不明  配偶者の生死が3年以上わからない場合
 強度の精神病で回復の見込みがない  精神病のため婚姻継続が困難で回復が望めない場合
 婚姻を継続しがたい重大な事由がある場合  DVやモラハラ、長期間の別居など

「好きな人ができた」というだけでは、これらのいずれにも該当ないため、離婚が認められる可能性は低いでしょう。

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離婚が認められるケース

ただし、次のような事情があれば離婚が認められる可能性があります。

① 相手が離婚に同意している場合

パートナーが離婚に同意すれば、話し合い(協議)または調停で離婚することは可能です。法定離婚事由がなくても問題ありません。

② 婚姻関係の破綻が明確な場合

「性格の不一致」「家庭内別居」「長期間の別居」などにより夫婦関係が破綻していると判断されれば、「婚姻を継続しがたい重大な事由」として裁判で離婚が認められる可能性があります。

例:5年以上の別居、家庭内での完全な断絶状態(会話なし、食事も別など)

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子どもがいる場合、離婚前に考えるべきこと

離婚は本当に必要かを再考する

子どもがいる家庭では、離婚による影響が非常に大きくなります。

  • 経済面の不安(特に母親が親権を持つ場合)
  • 子どもの精神的ストレス
  • 再婚後の子どもとの関係性の難しさ

一時的な感情や衝動で離婚を選ぶと、後悔につながることもあります。

まずは別居という形で冷却期間を設ける選択も考慮しましょう。

離婚後の親権・養育費・面会交流・慰謝料

親権・養育費・面会交流・慰謝料

親権は誰が持つ?

現在の法律では、離婚後はどちらか一方が親権を持つ「単独親権」が原則です(※2026年5月までに共同親権が導入予定)。

親権者は原則として話し合いで決定されますが、争いになれば家庭裁判所が判断します。実務上は、次のような原則が考慮されます。

親権判断のポイント①:一貫性の原則

これまで誰が主に子どもの養育を行ってきたかを重視する考え方です。たとえば、母親が日常的な育児を担っていた場合は、母親が親権を得やすくなります。

親権判断のポイント②:母性優先の原則

特に子どもが乳幼児の場合には、母親が子どもの心身の発達に与える影響が大きいとされ、母親が親権を持つことが望ましいと判断されやすい傾向があります。

ただし、母親であっても、恋愛に没頭し子育てを放棄していた等の事情があれば、父親が有利になることもあります。

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養育費の取り決め

養育費は、離婚原因にかかわらず、子どもを育てるために必要なお金として支払う義務があります。

「好きな人ができた」として離婚した側が親権を持った場合でも、相手方に養育費を請求できます。ただし、感情的な対立があると支払いを拒まれることもあるため、離婚協議書を公正証書にしておくと安心です。

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面会交流のルール作り

親権を持たない側の親が、定期的に子どもと会って交流を持つことを「面会交流」といいます。
子どもの健全な成長のためには、適切な頻度での面会交流が重要です。一般的には月1回、1回につき半日程度が目安とされます。

面会の日時や場所、頻度については、離婚時にしっかりと取り決めておきましょう。

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「慰謝料」は支払わなければならない?

慰謝料

不貞行為があれば慰謝料が発生する

「好きな人ができた」という理由での離婚であっても、その人と肉体関係を持っていた場合は「不貞行為」に該当し、慰謝料の支払義務が生じます。

また、たとえ肉体関係がなかったとしても、夫婦関係を一方的に壊したと判断されれば、慰謝料を請求されることがあります。

慰謝料の相場(目安)

  • 肉体関係あり(不貞行為):100万円〜300万円程度
  • 肉体関係なしだが一方的な離婚申出:数十万円〜200万円程度

慰謝料をできるだけ軽く抑えたい場合は、協議や調停による話し合いでの解決を目指すことが重要です。

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「好きな人ができた」場合の離婚に関するQ&A

Q1. 好きな人ができた場合、自分から離婚を切り出すと不利になりますか?

A. 不利になる可能性があります。
とくに既に好きな相手と肉体関係を持っている場合、不貞行為として慰謝料請求の対象になることがあります。
また、一方的に離婚を申し出ることで「婚姻関係を破綻させた側」と見なされ、親権や財産分与の交渉でも不利になることがあるため、注意が必要です。

Q2. 好きな人ができたことで別居を始めたら、それは不貞の証拠になりますか?

A. 別居自体は不貞行為にはなりませんが、別居の理由や経緯によっては不利な材料となることがあります。
たとえば、好きな人と同棲を開始した場合や、SNS等で交際の事実を示す投稿があると、不貞の証拠とされる可能性があります。

Q3. 子どもの親権を取りたい場合、「好きな人がいる」という理由は不利に働きますか?

A. 一概に不利とは限りませんが、親権判断では「子どもの養育に最も適した親かどうか」が重視されます。
そのため、恋愛が原因で育児をおろそかにしていると判断されれば、親権獲得に不利になることがあります。

Q4. 相手が離婚に応じない場合、どうすれば離婚できますか?

A. 相手の同意が得られない場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立て、それでも合意できなければ離婚訴訟(裁判)に進む必要があります。
裁判で離婚を認めてもらうには、民法上の法定離婚事由が必要です。別居期間が長くなれば、認められる可能性は高まります。

Q5. 離婚後、再婚した相手に子どもとの養子縁組をしてもらうことはできますか?

A. はい、可能です。
ただし、実親(離婚相手)の同意が必要です。実親の同意が得られれば、家庭裁判所の許可を経て、再婚相手との養子縁組が成立します。
ただし、子どもが15歳以上であれば本人の同意も必要です。

まとめ│感情だけでなく、法的視点と子どもの未来も考えて

子どもがいる中で「好きな人ができたから離婚したい」と考えたとき、

  • 法的に離婚できるか
  • 子どもへの影響はどうか
  • 経済的な不安はないか

を冷静に考えることが大切です。

また、親権・養育費・慰謝料・面会交流といった、離婚後の生活に直結する問題も数多くあります。

離婚を考えたら、まずは弁護士にご相談を

離婚を考えたら、まずは弁護士にご相談を

離婚は、感情だけでなく法律的な視点と冷静な判断が求められます。
当事者間の話し合いが難しい場合や、不安があるときは、離婚問題に詳しい弁護士にご相談ください。

弁護士法人山本総合法律事務所では、これまで数多くの離婚案件を取り扱い、依頼者の心情に寄り添いながら最適な解決策をご提案してまいりました。

協議・調停・裁判など、どの段階からでもサポートいたします。
離婚を迷っている段階でも構いません。お気軽にご相談ください。

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