離婚した夫が養育費を支払ってくれない場合の対応

更新日:2025/11/11
離婚した夫が養育費を支払ってくれない場合の対応

「離婚後の養育費を元夫が支払ってくれない⋯」

養育費は、子どもの生活や教育を支える大切なお金です。支払ってもらえないことで、経済的にも精神的にも大きな不安を抱えることになるでしょう。

本記事では、養育費を払わない相手に対して取るべき対応、請求可能な期限、そして解決に向けた弁護士の活用方法について解説します。

養育費を払ってくれない相手に取るべき対応

怒っている女性

養育費の未払いに対処するには、段階を追った対応が必要です。感情的に動くよりも、冷静に対応を進めていくことが、結果的にスムーズな回収につながります。

①相手に直接連絡・交渉する

まずは本人に直接連絡を取り、未払いの事実を確認し、支払いを促すことが基本です。電話やメール、LINE、郵便など手段は問いません。重要なのは、養育費が未払いであること、支払いを求めていることを明確に伝えることです。

ただし、連絡がつかないケースも多く、着信拒否や引越しなどにより音信不通になっていることもあります。その場合は、相手の居所調査なども視野に入れなければなりません。

②内容証明郵便を作成・請求する

直接の連絡が困難、または応じない場合は、内容証明郵便を使って請求を行う方法があります。内容証明郵便とは、どのような内容の文書を誰に送ったのかを郵便局が証明してくれる書類で、将来的には調停や裁判の証拠として活用できます。

作成時には字数や行数に指定があるものの、相手に対して「法的手続きも視野に入れている」という意思を伝える効果があります。

③家庭裁判所に調停を申立てる

内容証明を送っても状況が変わらない場合は、家庭裁判所に養育費請求の調停を申立てます。調停では、裁判所の調停委員が間に入り、当事者双方の合意を目指します。

養育費の調停が合意に至らなかった場合、「調停不成立」となり、自動的に「審判」へと移行。審判では、裁判官が養育費の額や支払い方法について強制的に判断を下します。

④履行勧告・履行命令を試みる

調停や審判で養育費の支払いが決定されたにもかかわらず、相手が無視する場合には、家庭裁判所に履行勧告や履行命令を求めることができます。

履行勧告は、家庭裁判所から相手に対して「決まったことを守ってください」と促す制度です。義務ではないため、強制力はありません。一方の履行命令は、命令に従わない場合に過料(最大10万円)を科すことが可能であり、一定の圧力をかけることができます。ただし、どちらも強制的に支払わせる効力はない点に注意が必要です。

⑤強制執行で財産を差し押さえる

最終的な手段として、相手の財産に対して強制執行を行うことができます。これは、調停調書や審判書、公正証書などの「債務名義」がある場合に限り可能な手続きです。

給与の差押えや、預金口座の差押えなどによって養育費の回収を試みます。多くの養育費未払の問題は、強制執行で解決できるケースが多いでしょう。ただし、財産の特定が必要なため、相手の勤務先や口座情報などの把握が欠かせません。

【参考】離婚に応じない夫に対し、裁判により離婚を成立させ、子供の大学卒業までの養育費や300万円の財産分与を認めさせたケース

養育費を払ってくれない相手に請求できる期限

お金とカレンダー

養育費の請求には時効があり、以下に述べる通り、原則「5年」または「10年」のいずれかが適用されます。

この期間を過ぎると、たとえ未払い分が残っていても、相手に対して法的に請求するのが困難になるケースがあります。したがって、支払いが滞っていると気づいた時点で、できるだけ早めに対応することが重要です。

協議などによる取り決めがある場合

離婚協議書や公正証書などにより、養育費の金額や支払い期日の取り決めがある場合、民法上の「定期給付債権」にあたり、支払いごとに5年で時効が成立します。つまり、2025年8月に支払われるべき養育費が未払いであれば、2030年8月にはその部分について請求権が消滅してしまうということです。

調停・審判で確定している場合

家庭裁判所の調停や審判により、養育費の請求が確定している場合、時効期間は10年になります。確定からしばらく経過していたとしても、10年以内であれば相手の財産を強制的に差し押さえることが可能です。ただし、ここでも放置し続ければ回収が困難になるため、できるだけ早い対応を心がけてください。

養育費の取り決めをしていない場合

そもそも養育費の取り決めが一切なされていない場合、過去の養育費について遡って請求するのは難しいのが現実です。少なくとも、内容証明郵便などで養育費を請求する意思を明確に示していることが大切になってきます。

とはいえ、将来の養育費まで請求できないわけではないため、まずは相手と協議をするか、家庭裁判所に調停を申立てるなど、具体的な行動を起こしましょう。

【参考】【弁護士が解説】養育費の相場・支払い期間・変更できるケースを徹底解説

養育費の未払いは弁護士に相談を

所員一同

養育費の未払いが続くと、経済的な困難に加え、精神的なストレスも重なり、生活全体に大きな影響を及ぼします。実際には、相手が支払いに応じなかったり、連絡が取れなかったりするなど、当事者だけでは解決が難しいケースも少なくありません。

このようなときは弁護士に相談するのが有効です。弁護士であれば、内容証明郵便の作成、調停や審判手続きの代理、強制執行の申立てなど、法的手続きを一貫してサポートすることができます。また、交渉段階から弁護士が関与することで、相手に心理的なプレッシャーを与え、支払いに応じさせる効果も期待できるでしょう。

当事務所では、養育費に関するご相談も数多く取り扱っております。元夫との交渉が難航している方、未払いが続いて困っている方は、お一人で悩まず、ぜひ一度ご相談ください。子どもの未来を守るために、私たちが全力でサポートいたします。

この記事をシェアする

メールでのご予約も受付中です。